慶應義塾におけるダイバーシティ

慶應義塾におけるダイバーシティ

担当常任理事      
兼協生環境推進室長  奥田暁代

多様性を重んじ公正で包摂的な社会の実現に向けて、多くの試みがなされています。ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンといったカタカナことば、あるいはLGBTQやSOGIといった英語の頭文字をとったことばが広く使われていることは、社会の変化を表しているのか、あるいは、これだけ外から概念が入ってくることは、私たちの社会の不寛容を示しているのか、考えさせられます。
例えば、「合理的配慮」は当事者が起点となることからも、誰もが声をあげ主張できる環境づくりが、多様性を尊重する社会には必要不可欠であることが分かります。問題は、そういった社会の実現に向けて、誰もが努力をしているのか、という点です。理想とする社会は誰かが創り出してくれるのではなく、その構成員誰もがそれぞれ心がけなければ実現しません。
社会の様態から疎外感を持つ人に対して、遠くから見守るだけでは互いの理解も深まらず、協生環境の理念と掛け離れています。まずは距離を縮め相手の気持ちを感じ取る努力が必要で、理想は対話が始まることです。もし、周りの人の多様性に気が付いていないとしたら、それは気づこうとしていないからでしょう。何かを見るとき、私たちは見慣れた風景だけを選び、何かを聞くときも、耳慣れた音だけを拾う。もし、新しい土地を訪ねる時のように、五感を働かせ全てを受け入れようとすれば、多くのことに注意が向き、自身もまた多様性の一環であることに気づくのではないでしょうか。
SOGI(Sexual Orientation & Gender Identity)はまさにそういった考え方に基づきます。誰もがセクシュアル・オリエンテーションとジェンダー・アイデンティティを持っています。誰かが特別なわけではありません。同じ輪の中に誰もが入れるように、相手に一歩近づいて声をかけ、話を聞いてみる。まさに協生の姿勢です。「誰ひとり取り残されない」社会を漠然と期待するのではなく、自ら行動することによって多様性、公平性、包摂性の実現に近づきます。
協生環境推進室では、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを尊重する環境を整えることで、慶應義塾の一人ひとりがお互いに助け合い理解を深め、協生社会を先導していくことを目指していきます。
Pride Commitment は慶應義塾のこのような姿勢に基づく取り組みです。ワークショップなど対話の場を設け、誰もが安心できる居場所を確保し、また専門家との相談窓口を設置します。